ミューザ川崎で聴く、森野美咲さんの歌声──リゲティ《グラン・マカーブル》の衝撃
ぐるりと舞台を取り囲む客席配置で知られるミューザ川崎シンフォニーホール。今回はステージ後方・2階席から鑑賞し、オーケストラを後ろから眺めるという貴重な体験になりました。指揮の合図や管楽器のブレスまで生々しく伝わり、音楽の“現場”に居合わせる感覚が強い席です。

この日のプログラムはモーツァルトを軸にしながら、ハンガリーの現代作曲家ジェルジ・リゲティの作品がスパイスのように効いた構成。伝統と前衛が一晩の中に同居する、聴き応えのある企画でした。


ハイライト:リゲティ《グラン・マカーブル》より「ゲポポ王子のアリア」
ソプラノ森野美咲さんが披露したのは、リゲティが1970年代後半に作曲・1978年初演したオペラ《グラン・マカーブル》からの名場面、「ゲポポ王子のアリア」。奇抜でコミカル、それでいて緻密。音の重なりがホールに渦を巻き、空気の密度が一段階変わるような瞬間がありました。以前ピアノ伴奏版で聴いたときよりも、オーケストラの色彩が増幅して“音の洪水”に飲み込まれる体験へ。

耳寄り情報(衣装について)

インパクト抜群のステージ衣装、どこかレディー・ガガを思わせるデザインだなと思ったら、なんと原宿にある、レディー・ガガ本人も買い物に訪れるというお店で購入されたものだそう(ご本人談)。表現のスイッチが衣装からも伝わってきて、音と視覚の双方で観客の集中を一気にさらっていきました。
※衣装写真は森野美咲さんのFacebookより。
今日のまとめ
モーツァルトの端正な美しさと、リゲティの前衛世界。距離のある二つを一夜に並べるからこそ、クラシック音楽のレンジの広さが体感できます。視覚効果も含めた森野美咲さんの表現は“聴く”を少し拡張してくれる時間でした。
関連リンク
- 過去に聴いた《ラ・トラヴィアータ》の記事 👉 森野美咲さん《ラ・トラヴィアータ》感想
- 以前の《グラン・マカーブル》公演について 👉 森野美咲@東京文化会館
コメント