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東風吹かば匂ひをこせよ


「最後の挨拶」のラスト。こんな台詞で締めくくられます。
この「最後の挨拶」自体は、ワトスン君の文体じゃないのも手伝って、あまり何度も読み返していないエピソードなのですが、ここのところの台詞はとても温かい感じがして好きなんです。

「東風が来るね。ワトスン君」

「そうは思わんが、ホームズ。こんなに暖かいもの」

「相変わらずだね、ワトスン君は。時代は変わっても君だけは同じだ。とはいえ、東風は吹くのだ。これまでイングランドに吹いたことのない風がね。冷たく厳しい風になるだろう、ワトスン、そしてその突風の前に我々の善良な人々の多くが萎えてしまうだろう。しかしそれは神の吹かせる風なのだ。そして、嵐の過ぎた後には、もっと清潔で、もっと善良でもっと強い国土が輝かしい太陽の下、広がることになるのだ。
車を出してくれ、ワトスン君。そろそろ出発の時間だ。僕は500ポンドの小切手を持っているが、早いとこ換金してしまわなくては。振出人が現金化を差し止める可能性があるからね。もっとも彼にそれが出来たらの話だが。

(延原訳の記憶もかなり混ざっていますが、拙訳です)


“There’s an east wind coming, Watson.”

“I think not, Holmes. It is very warm.”

“Good old Watson! You are the one fixed point in a changing age. There’s an east wind coming all the same, such a wind as never blew on England yet. It will be cold and bitter, Watson, and a good many of us may wither before its blast. But it’s God’s own wind none the less, and a cleaner, better, stronger land will lie in the sunshine when the storm has cleared. Start her up, Watson, for it’s time that we were on our way. I have a check for five hundred pounds which should be cashed early, for the drawer is quite capable of stopping it if he can.”

ここに出てくる「東風」。
これを私はながいこと「こち」と呼んでいました。
もしかしたら、延原訳の文庫本に「こち」と振り仮名があったのかも知れません。

「東風~こち」といえば、思い出されるのは、菅原道真の和歌
「東風吹かばにほひをこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ(春を忘るな)」

日本の地理的条件、しかも平安当時の西日本文化圏においては、「東風」は春の象徴であり、また春の東風は嵐になりやすいという意味も持っていたそうです。
気候は変わりませんから、今も同じですね。

では、イギリスはどうなんでしょう?
イギリスの気候の「東の風」っていうと、どういう象徴なんでしょ?
ここでの「an east wind」は嵐の前触れという意味で使われているようです。
ワトスンの台詞から想像すると、日本のとは逆で、これから寒くなるとかいう季節に吹くことが多いのかな?

この点、きっと誰か研究してるんじゃないかと思うので、ご存知の方がいらしたら教えていただきたいです。

そして出てきましたね。

Start her up

車に対して her が使われています。
(この時代はもう車が出てきてて、ワトスン君が運転するようですよ)
シャーロックの第一話「ピンク色の研究」でも「Open her up」という台詞が出てきてましたね。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (12件)

  • her
    以前YOKOさんのところでherについて色々考察して
    義母にまできいたけどハッキリわからず(私は)じまいだった乗り物のher。

    その後、私もCabin Pressureを自分で訳して
    何度も飛行機のことをherという言う箇所にあたり、
    やはりそうなんだ!とひとり興奮していたので
    YOKOさんがまたこれを取り上げてくださって嬉しい!!
    辞書に出てなくても用例を見つけるということは
    どの程度一般に使われているのかまだわかりませんが
    現実に使われていることは確かですね!!

    シャーロック・ホームズに自動車が出て来るのですね。
    馬車のイメージが強烈でしたけど。
    時代は流れるんですね。

  • her
    以前YOKOさんのところでherについて色々考察して
    義母にまできいたけどハッキリわからず(私は)じまいだった乗り物のher。

    その後、私もCabin Pressureを自分で訳して
    何度も飛行機のことをherという言う箇所にあたり、
    やはりそうなんだ!とひとり興奮していたので
    YOKOさんがまたこれを取り上げてくださって嬉しい!!
    辞書に出てなくても用例を見つけるということは
    どの程度一般に使われているのかまだわかりませんが
    現実に使われていることは確かですね!!

    シャーロック・ホームズに自動車が出て来るのですね。
    馬車のイメージが強烈でしたけど。
    時代は流れるんですね。

  • 馬車と電報

    飛行機のこともherというのですね!
    乗り物一般に女性をイメージするんでしょうか?
    母体のイメージで?
    私も、この部分を見て、真っ先に「ピンク~」の場面を思い出しました。

    ちょっと話はずれますが、ほかにもシャーロックに出てきた英語の言い回しをほかで耳にすると嬉しくなります。
    「in manner of speaking」って、シャーロックのS1E2でジョンのパソコンのパスワード破りのところで出てきた言い回しですが、このあいだ『刑事コロンボ』見てたら、コロンボ警部も使ってて嬉しくなりました^^

    ホームズ物語は何十年も書き続けられたお話なので、一般的には「電報」「馬車」のイメージですけど、最後の方のお話には「電話」や「自動車」も登場するんですよ。
    そういえば、ガイリッチーのシャーロックホームズにも自動車が登場してましたね。
    ホームズはあたらし物好きだったので、自動車なんて早くに試していたはずというのが、ガイリッチー監督の解釈じゃないかと感じました。

  • 馬車と電報

    飛行機のこともherというのですね!
    乗り物一般に女性をイメージするんでしょうか?
    母体のイメージで?
    私も、この部分を見て、真っ先に「ピンク~」の場面を思い出しました。

    ちょっと話はずれますが、ほかにもシャーロックに出てきた英語の言い回しをほかで耳にすると嬉しくなります。
    「in manner of speaking」って、シャーロックのS1E2でジョンのパソコンのパスワード破りのところで出てきた言い回しですが、このあいだ『刑事コロンボ』見てたら、コロンボ警部も使ってて嬉しくなりました^^

    ホームズ物語は何十年も書き続けられたお話なので、一般的には「電報」「馬車」のイメージですけど、最後の方のお話には「電話」や「自動車」も登場するんですよ。
    そういえば、ガイリッチーのシャーロックホームズにも自動車が登場してましたね。
    ホームズはあたらし物好きだったので、自動車なんて早くに試していたはずというのが、ガイリッチー監督の解釈じゃないかと感じました。

  • はじめまして
    時々読ませていただいてます。
    シャーロックの3が待ち遠しくてあちこちの
    ブログを見て周っています。
    東風についてですが、以前に「ロンドンはやめられない」というような題名の本を読んだ時に、最初の方でこのシーンに触れていました。東風は良い意味ではありませんでした。
    夫の転勤について行き長く在住されていた方のエッセイでしたので、内容に間違いはないだろうと思います。

    これからも楽しく読まさせてもらいます。ロンドン楽しみですね。

  • はじめまして
    時々読ませていただいてます。
    シャーロックの3が待ち遠しくてあちこちの
    ブログを見て周っています。
    東風についてですが、以前に「ロンドンはやめられない」というような題名の本を読んだ時に、最初の方でこのシーンに触れていました。東風は良い意味ではありませんでした。
    夫の転勤について行き長く在住されていた方のエッセイでしたので、内容に間違いはないだろうと思います。

    これからも楽しく読まさせてもらいます。ロンドン楽しみですね。

  • 森井さん
    はじめまして。コメントありがとうございます。
    この世界大戦の意味を離れても、よくないことの前触れとか、そんな意味なんでしょうか?
    その本も少し拝見したいと思いました。
    そして、このイーストウインドのやくですが、やはり延原謙訳のには こち とルビがふられていました。
    こち って大和言葉ですよね、少し違和感が………。

    そして第3シリーズ たのしみですね。
    撮影は順調なんでしょうか。
    ネタバレ、というか、事前情報をあまり入れたくなく積極的に情報取りに行ってないので、よくわかりませんが。
    本国での放映がいつ頃になるとかっていう情報はもうでてるんでしょうかね?
    楽しみですねー。
    今度は、真っ先にUK版のDVD買って見ることになるでしょう。
    日本語の助けがないから、四苦八苦しそうです。
    それまで 6エピソードを訳して行って英語、シャーロック力をあげておかなくちゃです。

    またいつでも遊びにいらしてください。
    シャーロックばなししましょう♪

  • 森井さん
    はじめまして。コメントありがとうございます。
    この世界大戦の意味を離れても、よくないことの前触れとか、そんな意味なんでしょうか?
    その本も少し拝見したいと思いました。
    そして、このイーストウインドのやくですが、やはり延原謙訳のには こち とルビがふられていました。
    こち って大和言葉ですよね、少し違和感が………。

    そして第3シリーズ たのしみですね。
    撮影は順調なんでしょうか。
    ネタバレ、というか、事前情報をあまり入れたくなく積極的に情報取りに行ってないので、よくわかりませんが。
    本国での放映がいつ頃になるとかっていう情報はもうでてるんでしょうかね?
    楽しみですねー。
    今度は、真っ先にUK版のDVD買って見ることになるでしょう。
    日本語の助けがないから、四苦八苦しそうです。
    それまで 6エピソードを訳して行って英語、シャーロック力をあげておかなくちゃです。

    またいつでも遊びにいらしてください。
    シャーロックばなししましょう♪

  • こち
    うろ覚えですが、イギリスでは東風はあまり歓迎されない気象条件のような書き方がされてたような、それと大戦をかけてるというようなかんじだったかもしれません。
    私も東風はこちと読みたくなる質ですが、ホームズの翻訳では違和感ありますね!

    第3シリーズの2話目も順調に行っているようです。1話と2話のタイトルは発表済み。情報は取りに行かない方が良いと思います。ファンがあげた写真がうっかり目に入っちゃいます。
    本国での放映はまだ未定とプロデューサーのスー・バチュー女史が自ら発表したそうです。間違った情報が出回りすぎてるようで。

    お言葉に甘えてまた遊びに寄らしてもらいます!!
    乗り物のherですが、絵本が好きで集めてますがアメリカの絵本で機関車をsheと表現していたいたと思います。乗り物はsheだけど訳す時は女性にしなくていいんだというようなのを絵本関係の評論で読んだような気がします。

  • こち
    うろ覚えですが、イギリスでは東風はあまり歓迎されない気象条件のような書き方がされてたような、それと大戦をかけてるというようなかんじだったかもしれません。
    私も東風はこちと読みたくなる質ですが、ホームズの翻訳では違和感ありますね!

    第3シリーズの2話目も順調に行っているようです。1話と2話のタイトルは発表済み。情報は取りに行かない方が良いと思います。ファンがあげた写真がうっかり目に入っちゃいます。
    本国での放映はまだ未定とプロデューサーのスー・バチュー女史が自ら発表したそうです。間違った情報が出回りすぎてるようで。

    お言葉に甘えてまた遊びに寄らしてもらいます!!
    乗り物のherですが、絵本が好きで集めてますがアメリカの絵本で機関車をsheと表現していたいたと思います。乗り物はsheだけど訳す時は女性にしなくていいんだというようなのを絵本関係の評論で読んだような気がします。

  • 森井さん
    またお越しいただき嬉しいです。
    以前に別のところで、「西風」は、西洋社会ではそよ風のイメージだと教えていただいたのですが、東風はいやな風なんですね。
    イギリスの気象条件がそうなのか、興味深いですね。

    いま2話目を撮影中なのですか。
    まだ放送時期は未定なのですね。
    そうりゃ、まあ、撮影も終わってないのに公式発表できませんよね~。
    気長に待ちましょう。
    異国にいては、DVDが出るまでは手も足も出ませんものね。

    やっぱり乗り物はshe-her-hersなのですね。
    お母さんのイメージかな。
    英語をこんなにぎっしりやることって、学生時代以来なので、楽しいです。
    好きなものを通してかかわるっていいですよね。
    森井さんは絵本を通しても触れていらっしゃるのですね。

  • 森井さん
    またお越しいただき嬉しいです。
    以前に別のところで、「西風」は、西洋社会ではそよ風のイメージだと教えていただいたのですが、東風はいやな風なんですね。
    イギリスの気象条件がそうなのか、興味深いですね。

    いま2話目を撮影中なのですか。
    まだ放送時期は未定なのですね。
    そうりゃ、まあ、撮影も終わってないのに公式発表できませんよね~。
    気長に待ちましょう。
    異国にいては、DVDが出るまでは手も足も出ませんものね。

    やっぱり乗り物はshe-her-hersなのですね。
    お母さんのイメージかな。
    英語をこんなにぎっしりやることって、学生時代以来なので、楽しいです。
    好きなものを通してかかわるっていいですよね。
    森井さんは絵本を通しても触れていらっしゃるのですね。

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